
支援センターや児童館で遊んでいて、子どもがおもちゃの取り合いになったことはありませんか?泣き出したり、怒ったり、時には手が出てしまったり…。
親にとってはハラハラする場面になりがちな「おもちゃの取り合い」。
そんな場面に出会うと、親としては「止めた方がいいのかな」「おもちゃを譲るべき?」「相手のお母さんに謝った方がいい?」と、どう対応すればいいのか迷いますよね。
はじめまして。
私は4歳と2歳の男の子を育てる、元公立幼稚園教諭の藍野あきです。
我が子たちは、長男はおもちゃを勢いよく取ってしまうタイプ、一方次男は、おもちゃを取られて号泣するタイプ。
そのため、取ってしまう側の申し訳なさ、取られてしまう側の切なさ、両方の気持ちを嫌というほど味わってきました。
相手が友達ならまだしも、初めましての子だと余計に気を遣うため、家に帰ってからどっと疲れが出ることも…。
この「おもちゃの取り合い」、実は2~3歳の発達の視点で見ると、成長の過程で見られる自然な姿なんです。
今回の記事では、よくある「おもちゃの取り合い」について、元幼稚園教諭の経験と発達心理学の視点から詳しく解説します。

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2〜3歳はおもちゃの取り合いが起きやすい!その理由を5つ紹介【発達の視点】
そもそも、2〜3歳ごろはおもちゃの取り合いがとても起きやすい時期です。
それは、しつけができていないからでも、意地悪をしているからでもありません。
発達の途中だからです。
取り合いの背景にはさまざまな発達的な理由が重なっています。

5つの理由を詳しく説明していきます。
まだ自分と相手の気持ちの違いが分かりにくい
2~3歳の子どもは、「相手にも、自分と同じように感情がある」ということがまだ上手く理解できない時期です。
どういうことかというと、
「積み木で遊びたい」という気持ちが、
取り合いをしている相手にもあるというところに気付けない
ということです。
簡単に言えば、自分の気持ちで頭がいっぱいの状態です。
そのため、「遊びたい」と思って悪気なく取ってしまうし、
取られると「遊べなくなった」と思って泣いたり怒ったりします。
遊びは学び。途中でやめるのが難しい
子どもにとって、遊びの時間は学びの時間そのものです。
目、耳、手など五感をフル活用して感触を確かめたり、試してみたりしています。
学んでいる途中でおもちゃを取られて「もう終わりね」とされてしまっても区切りがつけられないのは当然ですね。
言葉でうまく伝えられない
気持ちを言葉にするというのはまだまだ難しいのが2~3歳。
取られたモヤモヤや、おもちゃで遊びたい強い気持ち、そんな感情を
「取る」「泣く」「怒る」「押す」などの行動で表してしまいます。
特に、相手のケガにもつながる「押す」「たたく」といった行動を子どもがしてしまうと
「なんでそんなにいじわるなの?」と思ってしまうかもしれません。
しかし、それはいじわるや暴力的だからではありません。
「自分のモヤモヤを表す手段がそれしかない」という状態なのです。
「今」が大事。時間の見通しがまだない
2~3歳の子どもは、時間軸の概念がまだ育っていません。
過去を振り返ったり未来を思い描いたりすることは難しく、「今その瞬間を生きている」というような感覚で過ごしています。
そのため、「後でまた遊ぼうね」と言っても、子どもにとっては「今、遊べない」ということだけが強く残ってしまいます。
我慢や順番を待つ力がまだ育っている途中
脳の成長もまだ未熟です。特に、感情をコントロールする機能はこれから発達していきます。
つまり、
「今遊びたい!」
この気持ちを抑える、心のブレーキが発達途中ということです。
「ちょっと待とうね」「順番ね」親はよくこう言ってしまいますが、2~3歳の子どもにはとても難しいことが分かります。

2~3歳の子どもにとって「おもちゃの取り合い」は、成長途中だからこその姿なんですね。
「貸してあげて」は、実は子どもにとってはまだ難しい
取り合いになると、つい「貸してあげて」と言ってしまいませんか?
親としては、取り合いを収束させたいし、できれば相手の子が嫌な思いをしてほしくない。
そう思って我が子に「貸してあげて」と私もよく言ってしまいます。
実は、この「貸す」という行動は、2~3歳の子どもにはとても難易度が高いんです。
「貸す」ができるようになるには、頭の中でいろいろな力を使わなければいけません。

このように、「貸す」という行動の中には、いくつもの力が必要になります。
発達の段階から見ても、「貸す」は難しいということが一目瞭然ですね。
取り合いになると譲ること、貸すことをゴールにしてしまいがちですが、そこがゴールではありません。
「じゃあ取り合いになったときはどうすればいいの?」と思いませんか?
次の章で、親のかかわり方を詳しく解説します。
おもちゃの取り合い、親はどう関わればいい?対処法5選
では、支援センターなどで子ども同士の取り合いが起きたとき、親はどのように関わればいいのでしょうか。
大切なのは、すぐに叱ったり、無理に貸させたりすることよりも、
- 安全を確保する
- 子どもの気持ちを受け止める
- 子どもと相手の仲介をする
ということです。

親は「叱る人」や「無理やり解決する人」ではなく、子どもの気持ちを相手に伝える“通訳”のような役割に回りましょう。
危ないときは止める
相手の子を叩こうとする、おもちゃを引っ張りあっている、物を投げようとするなど、
「遊びたい」気持ちから危険な行動をしようとするときはまずは止めましょう。
「〇〇するのは、ダメ」と一言添えるのがオススメ。
長々と話してもまだまだ理解は難しいです。
「痛い痛いはダメ」ここは必ずダメと伝えるラインと、頭に入れておくといいですよ。
一言、冷静に毅然とした態度で伝えましょう。
まず気持ちを代弁する
「遊びたかったんだよね」「まだ積み木を積みたかったんだよね」
と、子どもの気持ちをまず言葉にしてみましょう。
そうすることで、子どもは「この気持ちは、こうやって言葉で表せるんだ」ということが分かってきます。
もちろん、一度言っただけではわかりません。
こういう場面でその都度代弁していくのです。
その積み重ねが、ゆくゆくは「こうしたかった」と自分の気持ちを言葉にする姿につながっていきます。
同じおもちゃ、他のおもちゃの提案をする
もし、その場に同じおもちゃがあれば「ここにもあるよ」と渡すと、双方の気持ちが満たされます。
もし一つしかなければ、試しに「このおもちゃもあるけどどうかな」と違うおもちゃを提案してみるのもいいでしょう。
「こっちのおもちゃで遊びなさい」と強制するのではなく、対等な立場に立つことが大切です。
あくまで仲介することを目的としてくださいね。
親が色々な選択肢を与えてあげることで「こうすればいいのか」と学ぶきっかけにもなります。
無理に貸さなくてもOK。後で貸すというのも一つ
親からすると、自分の子どもが相手におもちゃを貸してあげることが一番!と思いますよね。
しかし、この取り合いの当事者は親ではなく、子どもたち。
「貸してあげるのはどう?」と聞いて「いいよ」と言えば貸してあげるといいですが、
「いや」と言えば「今はダメだって。ごめんね」と相手に伝えるだけでOK。
ここで大切なのは「今は」を強調すること。
2〜3歳の子どもの世界は「まさに今」の時点です。
つまり、「ずっとダメ」とは言わない。
そして、遊んで満たされておもちゃから離れたタイミングで、
相手の子に「さっきはごめんね。これどうぞ」と渡すのです。
無理に貸さなくてもいいけれど、貸さないで終わらせない。
ここができると、子どもも「後で貸す」の意味を実感できます。
何回もこれを繰り返して、子どもは貸したり譲ったりすることができるようになっていきます。
長い目線で見てあげましょう。
簡単な言葉を知らせていく
「貸して」「いいよ」「どうぞ」「ありがとう」
こういった言葉は相手とのやり取りをする上で大切です。
子ども同士の仲介をしながら、親が言葉を使う姿をどんどん見せていきましょう。
「貸してくれたよ。ありがとう」と親が言うことで、「ありがとうと言えばいいんだ」と学びます。
2~3歳の子どもには、無理に言葉を言わせるよりも、親の言う姿を見せることの積み重ねが大切です。
【年齢別】成長に合わせておもちゃの取り合いの対応を変える

ここまで、2~3歳の子どもがおもちゃの取り合いをしたときの対応をお伝えしてきました。
「年齢が上がっても同じ対応でいいの?」と思う方もいるかと思います。
年齢が上がるにつれて、自分のものと他人のものの区別がついたり、我慢したり待ったりすることができるようになります。
そのため、成長に合わせて対応を変えていくといいでしょう。
4~5歳の「おもちゃの取り合い」の対応
自分のものと他人のものの区別がついてくるようになってきます。
とはいえ、相手の気持ちに気付いてどうするといいか考えるのは難しい時期でもあります。
「おもちゃで遊びたいみたいだよ」と、相手の気持ちに気付けるような声掛けをすると、
どうするといいか考えられるようになっていきます。
また、「取られて悲しそうな顔してるよ」「どうぞしたらニコニコになったね」などと、
相手の表情に気付けるような声掛けもとても大切です。
積み重ねていくと、相手の表情から気持ちを読み取れるようになりますよ。
5~6歳の「おもちゃの取り合い」の対応
相手の気持ちも分かってきて、どうすればいいのかを自分で考える力が少しずつ身についてきます。
見通しももてるようになってくるので、「後で遊ぶ」といったことも理解できてきます。
この時期になると親が「こうするといいよ」と提案すると、子ども自身が考えて動く機会を奪ってしまうことになりかねません。
「どうしたらいいと思う?」と子どもに考えさせるようにするといいでしょう。
子どもだけで考えたアイディアは、大人が思いつきもしないものだったりしますよ。
親はすぐに口出しするのではなく、まずは子どもの考えを見守ってみましょう。
もちろん危険なことは止めたほうがいいですが、まずは「いいんじゃない」「やってみようか」と肯定すると、自主性が育っていくでしょう。
取り合いの経験で育つ力とは
親にとってはハラハラドキドキするおもちゃの取り合いですが、この取り合いを経験していくつもの力が育ちます。
「まだ遊びたい」「これがいい」そんな自分の気持ちに気づきます。
そして遊びたいものを取られるときの嫌な気持ちを知ることができます。
何より、自分だけではない世界を知ります。つまり、相手がいるということを知ることができます。
気持ちを代弁してもらったり仲介してもらったりすることで言葉を覚えていきます。
さらに年を重ねると、我慢したり、順番で遊んだりと、社会性が身についていきます。
ゆくゆくは「じゃあこうしよう」と自分たちで解決する問題解決力も出てくるでしょう。
まとめ|取り合いは「社会性を学んでいる途中」

支援センターなどでよくみるおもちゃの取り合い。
親としては、取り合いをせずに仲良く遊んでほしいと願ってしまいますが、取り合いは成長の証。「社会性を学んでいる途中」です。
親がどんと構えて適切な対応を繰り返すことで、周りと一緒に生きるということを学んでいきます。
2~3歳はイヤイヤ期と呼ばれる時期でもあります。
親からみると「わがまま」「いじわる」と感じる行動も、ちゃんと成長しているからこその姿です。
「どうしてこんなことするんだろう」
「育て方が悪かったかな」
と自分を責めているお母さんがいたら、この記事を読んで安心してくださいね。
「私の子、ちゃんと成長してる!」
そう思ってくれるとうれしいです。
イヤイヤ期で悩んでいるお母さんは、こちらの記事も参考にしてみてください。
育児とは長い付き合いです。
無理せず、息抜きをしながら一緒に頑張りましょうね。
・『0~5歳児の発達と保育』
・『保育の心理学』
・『子どもへのまなざし』
などの発達や保育に関する書籍を参考に、幼稚園教諭としての経験をもとにまとめています。




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